好きと言えるその日まで
 吐いた後、先輩はふっと笑った。


 そしてまた私の頭に少しだけ手を乗せて、私の視線を無理矢理下げさせた。


 「ちょ、せんぱっ」

 「俺、嬉しかった」

 「え?」

 「花も、今日も」

 「え、っと……」

 「けど、だからってそれ以上の答えがない」

 「―――ハイ」

 「意味、分かるか?」

 
 分かるような分かんないようなその言葉に、何と言っていいか分かんなくて地面を見つめると先輩の手が離れた。


 そっと顔を上げると、私の瞼の裏に残る―――先輩の困ったような笑い顔が見えた。





 「嫌いじゃない、葛西が」





 その言葉に、涙が出た。



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