好きと言えるその日まで
 静かに頬を流れていく雫を拭うことなく先輩を見る。


 先輩はなおも困った顔で私を見ていた。


 「嫌いじゃない。でも、好きとは言えない。お前が、葛西が何を想って俺を好きだと言ってるか分かんないけど、それは嫌じゃない。だからどうしていいか困ってる」


 正直すぎる気持ちに、私はまた一筋涙が出た。


 やっぱり、先輩は優しいって思った。


 真面目で、まっすぐで。


 ダメな私をそっとフォローしてくれてる。


 放っておいたっていいのに、帰り道が同じだからって送ってくれたり。


 きちんと返事をしてくれたり。


 本当は気持ち悪いって言われたっておかしくないと思う。


 勝手に好きなモノだって思いこんで、それ言って。


 しかも違うし。


 全部馬鹿みたいに恥ずかしいのに、先輩は笑ったりしなかった。


 馬鹿だって言ったけど、ちゃんと受け止めて答えてくれたから。


 だからやっぱり、優しい―――
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