好きと言えるその日まで
 今日何度目か分からない嘘って言葉を口にすると


 「嘘じゃないから。わざわざ野球部ないとこ入学したの、そのためだから」

 「え、え?」

 「じゃーな」


 ポンポン。


 先輩は、撫でてるとは程遠い重たい手を私に叩きつけると、後ろ手にひらひら手を振って歩きはじめた。


 だけど数歩歩いて振り返った。


 「あ、忘れてた」

 「え?」

 「これ、やるわ」

 
 コントロール抜群で私の手に何かを投げつけた。


 手元には、さっき胸に刺してたシャープペンシル。


 「花はないから。それで勘弁して」

 「え?」


 意味不明な私を余所に、先輩は今度こそ歩いて行ってしまった。
< 41 / 72 >

この作品をシェア

pagetop