好きと言えるその日まで
ズルい思考と欲と
 尚人先輩は、よく分かんない人だ。

 
 あんまり押しかけちゃ悪いと思ってメールをしないでいると『病気かと思うだろうが!』って怒りの電話がかかってくる。


 だからってメールしたってそっけない。


 『ふーん』『そう』『良かったな』


 の3つの相槌で大体終わらされてしまう。


 ハートマークは禁止って言われて、絵文字も極力減らした。


 友達に覗かれたときに目立つから恥ずかしいんだって。


 だからそれなら送りませんって言ってるのに。


 でも送るなって言われるよりは嬉しくて。


 結局一日1通は送っちゃうんだけど。


 広い広い校舎内で会うことはなかなかなくて。


 それでも今日の出来事と併せて『おやすみなさい』ってメールすると、おやすみって返ってくる。


 ねぇ、少しは好きになってくれたのかな?


 なんて、自惚れですよね、はい。


 明日は会えたりしないのかな……って祈りながら、瞼を閉じる。


 私はただの後輩で。


 尚人先輩は、ただの学校の先輩ってだけで。


 それ以上のつながりはない、この不自然な関係に名前がつかなくて。


 不安な思いは募りながらも、私は今日も先輩の少しの時間を―――メールを見るたった一瞬の時間を―――独占したくて、今日もメールを送信する。
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