好きと言えるその日まで
 ちょっとだけいつもより楽しかった夏休みが終わって、2学期が始まって。


 だけど私の日常はそんなに変わらなかった。


 夏休みがちょっとだけ楽しかったのは……尚人先輩とメールが出来たから。


 けど―――会ったりはしなかった。

 
 私だって華の女子高校生ですからね! ちょっとは期待してたんだよ?


 遊びに行かないかーとか、とかっ。


 それなのに尚人先輩って超そっけなーい。


 おはよう、おやすみ。の二点くらいがまぁまともな言葉で。


 私が今日は暑いですねーとか送っても『あぁ』とか『そうだな』で終わり。


 会話も3秒でチーンだよ。


 近くに住んでるはずなのに、運命的に出会ったり!! なんて女子高生がにやけちゃうような嬉し恥ずかしな展開は訪れもせず。


 私って、もしかして運命から見放されてるのかも……いや、そもそも尚人先輩との縁がないのかもとか落ち込みを感じつつ。


 そんな感じの夏休みだったから「いつもよりちょっぴり楽しかった」になったんだけど。


 いざ学校に来てみたところで、このでっかすぎる校舎で会えるはずもなく。


 とほほな気持ちを抱きながら、私はため息を吐いて今日も帰路についていたんだけど―――


 『駅前で待て』


 なんて何の指示ですか!? 私って犬ですか!? 的なメールが送られてきたことに気が付き、私はぴたりと歩みを止めた。


 『まもなく電車が到着します』というアナウンスが聞こえる構内を気にしつつ、私は改札機に定期をタッチする寸前で手を引っ込めた自分に、内心で拍手を送った。


 ―――尚人先輩が、文章を送ってきた!!


 こんな快挙がかつてあっただろうか? いや、ないないない!!


 テンション高く、舞い上がっていきそうな気持ちをなんとか引き留めて、ニヤニヤしそうになるほっぺを両手で挟みながら私は現れるんだろう尚人先輩を待った。
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