好きと言えるその日まで
 *


 なんか、イライラするんだよな。


 横に座る葛西をまたチラッと見て、俺は息を吐いた。


 なんだろう、カルシウム不足か?


 って、オカンにしょっちゅう言われるから、きっとそのせいだろう。


 帰ったら牛乳飲もう。


 なんてどうでもいいことを思いながら、ぼーっと外の景色を見つめた。


 何も変わらない日常がそこには広がっていて、強いて言えば今隣に居るコイツの方が非日常だ。


 非日常は精神的に疲れる。


 いつもと違うんだから、当たり前かもしれないけど―――


 でも、それでも。


 それが嫌だと思えないんだよな、いつも。


 

 なんて思いながらまた、ふぅと息を吐くと葛西が遠慮がちに声をかけてきた。


 「あの、尚人先輩」

 「何?」

 「あの、今日の、用事って」


 ヤバい。


 今日、駅前で待っておけって言ったの、俺だったし。


 つーか待たせてたのは俺の方で、その俺が機嫌悪いって、俺最悪だな……


 葛西のその一言で、自分のモヤモヤをとりあえず払しょくさせることに決め、なんとなく姿勢を正してから車内を見渡した。


 ―――誰も、いねーよな。


 なんとなく、ほんとなんとなくだけど。

 聞かれたくないと思う気持ちが働いて、そんな行動に出た。


 そんな風に思うならメールで済ませておけばいいだろって話なんだけど。


 それにはちょっと抵抗が……というより、言ったときの葛西の表情を見たかった。 


 嫌々頷かれるのなら、嫌だと言う気持ちもある。


 ゴクっと唾を飲み込んで、拳を軽く握ってから俺は口を開いた。


 なんか、告白するみたいだな―――なんて頭の片隅で思いながら。


 「今度の土曜日、時間あるか?」


 *
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