BrandNewDay

　千鶴の両親と僕はよく知らないが如月家の親戚の人たちや近所の人たちだろうか…？それよりも目に入ったのが…黒い額縁に入った大きめの…笑みもないクールな千鶴の写真。額の右上には黒いリボンが綺麗に巻かれていた。いかにも、もうこの世からいなくなりました、それが一目でわかる証でもあった。

　｢…ソだ…｣

　……う、嘘だろ？夢？夢だとしたら僕はどんなに悪い夢を見ているんだ！でも、さっき走った辛さと、クラスメートに言われた時の、胸を締め付けるような苦しみは夢だとは思わなかった。確かに僕の握りしめた手に汗が出ている。夢じゃないということは分かっているのに僕は夢だとしか思いたくなかった。グラリと朝から視界が揺れた気がしたのはこのせいなのだろうか。

　｢あら、蓮くん…学校は…？｣

　僕が呆然と立ち尽くしているのに気付いた千鶴のお母さん…おばさんは僕に声をかけて来た。クラスメートからの緊急な知らせに学校を早退して来たけど…僕は言葉が出なくて…ただおばさんの言葉に俯いた。すると、おばさんは僕の前に立って、僕の肩にそっと手を置くと、

　｢蓮くん…いつも千鶴と遊んでくれて…ありがとうね｣

　…声が震えていた。…………。おばさん、泣いてた。いつもニコニコして、優しくて…そんなおばさんが泣いてた。一人っ子の千鶴。最愛の一人息子を亡くしたのだからどんな気持ちなのかは、すごく痛いくらいわかる。

　でも、僕は目が熱くなってくるのにぐっと涙をこらえると、おばさんに聞いた。

　｢おばさん…どうしてですか…？千鶴はどうしてっ……！｣

　おばさんは俯きながらも、応えてくれた。