すべての想いをキミに



時間とお金に、そこそこの余裕があった当時、私は少女漫画雑誌を一冊買ってみた。



学生時代、恋愛といえるような経験はほとんどなかったので、雑誌を読み、こんな恋愛したかったなぁ…などと考えていた。



月刊誌だったので、待ちきれず、他の雑誌も読んでみたり、気に入った作品があれば単行本を買ってみたり、恋愛漫画にどっぷりはまっていった。



色々読んでみると、作品や作者の個性が気になり始め、なぜこんなにややこしくするんだろう、とか、ありがちなストーリーだけど現実的ではないな、とか、段々物足りなくなっていった。



画才があれば、私も漫画を書いてみたい…と思うようになっていった。



それでも、毎月欠かさず雑誌を買って読み、次の展開がどんなふうになるのか、新連載はどんな作品なんだろうとか、それが楽しみでもあった。



ストーリーを考え、絵を書き、連載を続けていくという苦労を自身が知るのは、まだ先のことで、相変わらず呑気で平凡な毎日を、淡々と過ごしていた。



そんな日常に変化をもたらしたのは、何気なく目にした、ひとつの携帯小説だった。



今では映画化されたほどの人気小説。でも、私には満足感を得られるようなストーリーではなかった。



ドラッグ、暴行、最愛の人との死別。どれも自分が置かれている世界には当てはまらなかったからかもしれないし、実話とは言っているが、こんなドラマティックな現実が、この世にあるのだろうか、と一蹴してしまっていた。

それに、暗いストーリーは好みではなく、もっと明るくて笑えて、時々気持ちのズレが生じたり、それでも最後には2人の恋愛は無事に成就した、というような展開の方が好ましかった。



今思えば、自分の恋愛経験が乏しく、そのような展開しか浮かばなかったからかもしれない。



携帯小説には、色々なジャンル、ストーリー、その携帯小説界だけでのカリスマ的人気がある人がいることを知った。



本当に、気まぐれだった。暇潰しとしてしか考えてなかった。



ー自分でも、できるかな…ー



思うが先に、私は携帯小説を書くようになっていった。



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