赤き月の調べ
プロローグ



 今夜の男も、今までと変わらず今になって命乞いをはじめた。


 その光景に、彼の苛立ちが募る。


 命乞いをするくらいなら、はじめから自分の行動に責任を持てばいい。


 永遠の命があろうが、後悔してからでは遅いのだ。


 苛立ちを隠そうともせず、彼は深いフードの下から血のように赤い冷たい瞳で、目の前の男を見下ろした。


 哀れにも男の顔に美しさはなく、目の下は黒くなり目は血走っている。


 正気ではないのは、誰の目から見ても確かだ。


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