赤き月の調べ
「どうかしたの?」
「ああ。ちょっと用事があって、帰りの迎えに来れない。明日からの予定に変更が出たみたいなんだ」
狼は不機嫌な顔で言った。
一度も聞いたことのない、ざらついた声だ。
「明日からって言うと……ああ」
さっきまで見ていた月を思いだして納得した。
明後日には満月になるため、狼は仲間と四日ほど海外に行くのだ。
狼の趣味は写真を撮ることで、特に熱心なのが満月の写真を撮影することだった。
狼が何かを言い出す前に、希空は首を横に振った。