赤き月の調べ


「どうかしたの?」


「ああ。ちょっと用事があって、帰りの迎えに来れない。明日からの予定に変更が出たみたいなんだ」


 狼は不機嫌な顔で言った。


 一度も聞いたことのない、ざらついた声だ。


「明日からって言うと……ああ」


 さっきまで見ていた月を思いだして納得した。


 明後日には満月になるため、狼は仲間と四日ほど海外に行くのだ。


 狼の趣味は写真を撮ることで、特に熱心なのが満月の写真を撮影することだった。


 狼が何かを言い出す前に、希空は首を横に振った。


< 10 / 43 >

この作品をシェア

pagetop