赤き月の調べ


 夜空には、あと二日もすれば満ちる月が浮かんでいる。


 月明かりのおかげで、街灯の少ない駐車場でも不便じゃないくらい明るい。


「ああ……わかった。それじゃあ、後で」


 会話を終了させる挨拶が聞こえ振り返ると、しっかりと狼の表情まで見えた。


 眉間にシワを寄せているところから、明らかに電話の内容が不愉快なものだったのが伺える。


 いつだって温厚で人当たりのいい狼の意外な一面に、希空は少し面食らった。



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