甘い蜜
大きな背中
「ねえ、お祭り行こう?」
ある日のこと、寝起きのあたしに凛が言った。
目の前には目を輝かせた凛の顔。
「…今何時?」
起きるにはまだ時間は早い気がする。
「昼だよ。ねえ、お祭り行こう?」
ーーー昼!?
仕事は夜からなんだし、まだ寝かせてよ。
「…もうちょっと、寝かせて」
重たい瞼は、もう開けていられない。
眠い体はソファに沈んでいく。
「お祭りは?行くよね?」
ーーーお祭り…?
「…うん、いいけど」
多分あたしは、こう答えたはず。
眠くて意識がはっきりしない。
次の瞬間、
「やったー!」
凛のデカい声が部屋に響いた。
その声に、あたしは薄っすら目を開けた。
「みーちゃん起きて!準備して!」
「…え?」
「これから行くんだよ、お祭り!」
「…これから?」
ーーーこれからお祭り…?
理解するのに数分はかかったはず。
凛は相変わらず目を輝かせて、あたしを待っていた。