Dear...
「今日、家に携帯忘れて来たんだよな…。」


アドレスを聞くつもりで携帯を取り出した私は、どうしていいか分からなくなり、彼の言葉を待った。

―――遠回しに、拒否されてるってことはないよね?

そう思い始めると、不安でいっぱいになってくる。

どうして、好きな人の仕種や言葉には、こんなにも過敏になってしまうのだろう。


「自分のはちゃんと覚えてないから…そうだな…この紙に、アドレス書いてくれない?」

「あ、はい!」

「じゃあ、講師室に用あるから、悪いけど講師室の前まで持って来てくれるかな?ごめんね。」


渡された紙は、授業で使ったものだった。階段を降りて行く彼に向かい、


「すぐ持っていきます!!」


と言うと、振り返り様にニコリと笑った。


そうしてやっと、紙を持つ手が震えていた事に気付いた。
< 26 / 106 >

この作品をシェア

pagetop