Dear...
彼の授業は、楽しかった。嫌いな教科だったのに、初めて授業を面白く思えた。

だけど、やはり苦手なのに変わりはなく、ちょこちょこ問題に引っ掛かっては、ペンが止まっていた。

質問―――をすればいいのに、今までろくに質問に行った事がなかったため、なかなかタイミングが掴めない。

それでも、自力で考えるのに限界があるものが出てきてしまった。

半ば、おどおどした様子で授業後の教壇に近付いていくと、彼と目が合った。


『どうした?…質問か?』


優しく笑いかけながら私にそう声をかけた先生は、私の手元のテキストを見つめた。


『あの…分からない問題があるんですけど……いいですか?』

『うん。どれだ?』


それが私と彼の初めての会話だった。
< 47 / 106 >

この作品をシェア

pagetop