Love Songを君に【Ansyalシリーズ TAKA編】
広いホール、
二人きりの時間。
いつものように
真剣な表情を浮かべる
彼の隣、私もピアノの前に立って
彼が紡いでいく、
指先の隅々までを確認していく。
必死になる時間はとても早く、
そしてお互い、
汗まで滲ませながら。
「唯ちゃん。
これでどう」
一曲を頭から最後まで
弾きつくした彼は、
少し呼吸を整えながら
私の方を見る。
「ここまで、本当に
良く頑張ったわね」
彼を見て、
私は心からの言葉をかける。
ふと、ホールの真後ろの扉が
ゆっくりと開く。
そこから、楽器を片手に
何人もの人たちがステージの方へと
向ってくる。
思わずピアノの前で
立ち上がって眺めていると、
この場所に連れて来てくれた
裕先生の姿を確認する。