Love Songを君に【Ansyalシリーズ TAKA編】
5.消えない傷痕 -雪貴-
もぞもぞと気配を感じて
ゆっくりと目を開ける。
「おはよう。雪貴」
柔らかに降り注ぐ、
唯ちゃんの声。
「……唯ちゃん……」
「起こしちゃったね。
まだ早いよ」
俺が眠るベッドサイドに近づいてきて、
キスを落とす、唯ちゃんの腕を
ギュっと掴み取って抱き寄せる。
唯ちゃんの体温、唯ちゃんの鼓動が
俺の中に流れ込んでくる。
「……もうっ……。
ほらっ、雪貴、遅刻しちゃう。
今から朝食作ってくるから。
今日はオートミールね。
お昼ご飯は、リゾットを作っておくから
レンジで温めて食べてね」
部屋を出る唯ちゃんを追いかけるように、
リビングのソファーに座り込むと、
唯ちゃんが刻む、包丁の軽快なリズムが
聴覚を刺激する。
気が付くと無意識のうちに、
指先がギターの弦を弾き
ピアノを爪弾く。
全てはエア-のみの仕草。
それでも俺の中には、
リアルな音色が溢れだす。
そんな俺を、
対面キッチンから覗きながら
にっこりと微笑む唯ちゃん。