Love Songを君に【Ansyalシリーズ TAKA編】
土岐悠太【ときゆうた】。
忘れもしない、
私が死にたいと思った
きっかけを作った存在。
「なんで……。
なんでアンタが来るのよ」
心の中だけで呟いたはずの言葉は、
知らない間に、
周囲にも知られるほどに
大きな独り言になっていて。
一斉に集中する
他の先生たちの視線。
昔のことなんて
忘れたかのように
同じような視線を向ける
アイツ。
「緋崎先生。
言葉を慎んでください。
土岐先生には、
冴崎【さえざき】先生と一緒に
今後の授業の打合せをお願いします。
後、土岐先生、
SHRは緋崎先生のクラスを
体験してきてください」
教頭はそう言うと、
職員会議は早々に終わった。
このまま職員室にいる
気分にもならなくて、
慌てて出席簿だけを抱えて
教室の方へと行く。
そんな私の後ろ、
慌てて追いかけるように
ついてくるアイツ。
「唯香、
何そんな他所他所しいんだよ。
お前、ホントに教師してたんだな」
そうやって話しかけてくる
アイツの声を
反射的に遮断したくなる。
「おはよう、唯ちゃん。
まだチャイムなってないよね」
「おはよう」
教室に早足で向かう私に、
次から次へと話しかけてくる
生徒たち。
そんな生徒たちに
挨拶を返しながら、
私は冷静さを保つのに必死だった。
「よっ、唯ちゃん」
背後から肩に手をポンっとあてて、
私の名前を呼ぶのは雪貴の友達。
今学期もまた雪貴の変わりに
クラス委員の代理を引き受けてくれた
霧生【きりゅう】くん。
「ちょっと唯ちゃん、こっち来て」
言われるままに、
霧生くんに手を引かれて
人気のない場所へと連れていかれる。