Love Songを君に【Ansyalシリーズ TAKA編】
「唯ちゃん、疲れて寝てた?
ほっぺに痕ついてる」
そう言われて、慌てて頬に触れると
鞄の取っ手にそって筋が
出来てるみたいだった。
「……ヤバっ。
どうしよう……」
戸惑う私に、
霧生くんはサラリと告げる。
「唯ちゃん、5時限は授業ないんだから
ここで寝てたら消えるんじゃん。
雪貴と連絡取れてる?」
霧生くんが紡いだ雪貴の名に
チクリと痛む私の心。
アイツが押しかけるように
出入りするようになった
私の部屋。
アイツに暴漢まがいに
押し倒されるたびに、
雪貴への罪悪感ばかりが募って
部屋に飾っていた、
雪貴との写真は全て、
写真面を下にしてひっくり返してる。
雪貴へのメールも返せてなければ、
着信を確認しても、
電話すら出来てないでいた。
私がこんなことしてたら、
向こうで雪貴が心配しちゃうって言うのも
頭では知ってるはずなのに、
私の心はついていかない。
「ねぇ、唯ちゃん。
土岐が言い触らしてること、
何処までが真実?」
そう切り出した霧生くんの言葉に
開け放たれた、苦い過去は
私を追い詰めていく。
立つことすら出来ず、
倒れ込むように、椅子に座り込んだ私に
彼はかなり慌てているみたいだった。
そんな時、外側から鍵を回す音が聞こえて
アイツが姿を見せる。
「唯香、悪い子だ。
宮向井雪貴、彼だけで飽き足らず
霧生音弥まで手を出して」
そう言いながら近づいてくるアイツ。
アイツが近づくたびに、
体の震えは止まらない。
「土岐先生、
雪貴の名を使って、
唯ちゃんを脅してるんですか?」
霧生くんは震えが止まらない私を
気遣うように、
アイツの前に立ちはだかる。