ミラクルにいこう!
2人はジョリイに近づいてみたが、まひるがジョリイに舐められたりなつかれただけだったので、智房はいちばん体格の大きい女の子に事情をきいてみた。


「君たちのお父さんやお母さんから君たちを助けるように頼まれてここにきたんだけど、いっしょに帰らないか?」


「帰らないわ。だって、お父さんもお母さんもこんな大きな生き物がいたら生きていけないって怒るんだもん。

こんなにおとなしくていい子なのに。
みんなでお世話したら、やっていけると思うんだけど、ぜんぜん私たち子どもの意見なんてきいてくれなくて。」


「でも、だからといって家出してきたら・・・ほら、ゴハンだってこっちじゃ思うように食べられないんじゃないの?」


「食べられるよ。困ることはぜんぜんないの。
ここには王子様といろいろ助けてくれる人たちがいるから・・・。」



「王子様?助けてくれる人だって?」


智房はまひるをひきずって子どもたちが教えてくれた王子のいるお城へと向かってみた。



「おお~よくぞ、いらっしゃいました。
あなたが異世界の魔女ですね。」



「えっ・・・なぜ、そんなことを・・・?
あなたは王子だと子どもたちからきいたんですけど、ここは子どもたちの親たちのいるところとは別世界なのですか?」


「あ~説明すると難しいかもしれませんが、別世界でありつながっているともいえますね。

あの子たちの親はきちんと子育てしているとはいえないような親たちです。

生活が苦しいという名目で働くことはいいことでもあります。
しかし、お金にばかり目がいってしまい、子どもは休日だけのペットのような扱いはやっぱりいけないと思います。

子どもたちはたとえ貧しくても、みんなで過ごす時間を求めていて、遊んでほしい年齢の子は遊んでもらって甘えたいのです。

私は子どもをさらってよからぬことを企てるなど思っていません。
ただ、子どもたちが笑顔になる環境を作ってほしいだけです。

子どもたちがここが居心地がいいというなら、ここに居させて自由にしています。
帰りたいと子どもが希望すれば、僕は子どもたちを親元まで送っています。」



「そういうことだったんですかぁ・・・。化け物にさらわれたから子どもたちを助けてと私たちは頼まれたから、化け物と戦う覚悟でやってきたんですが、そんなことだと無理ですね。」


まひるがそう王子に話すと、智房が肘でまひるにつついて小声で言う。


「簡単に信じて納得しちまっていいのか?
俺たちはこのまま親のいる世界へはもどれないぞ。

まるめこまれたって袋叩きになってもいいのか!」


「そ・・・それはありえますね。どうしよう・・・。もどれない。」


すると王子はまひるに手を差し出して言った。


「あなたもここで暮らすといいですよ。
私はいろいろと異世界のお話をききたいですし、それに・・・あなたと出会って僕はどうやら一目ぼれしてしまったようです。」



「え゛!?ええーーーーーー!!!」


「王子、こ、こいつのどこがそんなに気に入ってしまったんですか?
魔法は大初心者だし、ちっちゃいけど、とても美人とは言えません。
なのに、どうして?」
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