ミラクルにいこう!
翌日から智房はまるで運動部の強化合宿のような生活をすることになった。

講義で学ぶもの、運動、そしていちばん難関であって未知な部分となる魔力テスト。

とくにこの世界でいうところの魔力と呼ばれているものは、お話でよく出てくる魔法使いのアレではなくて、多種多様な世界をつなぐ時空の鍵=時空安定装置を扱える能力のことを魔力と称されている。


その力は機械を扱う緻密な能力と視力が必要なのと、次元のゆがみを正す行為をする上でまひるのように引きずられない力が必要らしく、その力は他者を思いやる力と自分に対する力と全体を眺める力に秀でていなくてはいけないという。


「ふむ・・・わかったようなわからないような言い回しだな。
で、俺の現在のレベルというか、実力みたいなのはどの程度なのかな?」


智房に尋ねられた教官は比較的にこやかに説明し始めた。


「そうですね・・・最終的には教官全体の判定といつき様と王家三役の方々が決定なさることなので、うかつには言えないものなのですが・・・。

私個人での評価を述べさせていただくならば、外部世界の方にしてはとてもいい方だと思います。

学力、運動能力、礼儀作法はかなりのもの。
しかしながら、魔力部門は他者、全体視力にかけては突出しているといってもいいかわりに、あなたご自身を扱う力が極端に欠けているように思います。

そこが弱いのはじつは致命傷になりかねません・・・。
失礼ですが、あなたの世界で生活されていたときも、かなり心身の痛手を受けていたのではありませんか?」


「・・・・・ふ。なるほど。こういう授業なんて初めてだ。
先生にため口で話してもいいと言われたから不思議だと思っていたけど、みんな見透かされているんだね。

その欠点はこれから修復できるものなのかな?」


「もちろん可能ですよ。
たぶんそれは、この家の方々と慣れ親しんでいけばわりと簡単に修復できると思います。

菘家のご兄弟は皆さまとても前向きでいらっしゃるので、影響を嫌でも受けることになるでしょうし、誰よりもがんばりやであなたにタイプが似ておられるいつき様が取り仕切っておられますからね。」


「いつき様は若く見えるようだが、じつはいくつなんだ?
それに奥さんを紹介されていないが・・・独身か?」


「たしか・・・いつき様はあなたと同じだったと思います。」


「なっ!俺と同じだって。それは俺のいた世界とここの時間の単位が違うとか数え方が違うとかいうんじゃないのか?」


「若干のうるう秒はあるものの、ほぼ同じはずです。
33才ですね。
それといつき様の奥様は昨年亡くなられました。

その影響でまひる様もミスを犯してしまったようです。」


「まひるが?・・・その話もう少し詳しくきかせてもらってもいいかな。
まひるがかかわっているなら、俺にも知る権利がありそうだ。」
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