ミラクルにいこう!
ナミリハの目線の延長上に智房の真剣な眼差しがあり、それは偉そうな上から目線でもなく、親切の押し売りでもなかった。

笑顔でもなく、ただまっすぐに誠実なだけな気がナミリハには思えた。


「私が声をかけても誰もきてくれなかったら、私は悲しい・・・。」


「王女はその足や他の女性と自分を比べることで、すでに負けておられる。
誰も来なかったら、見る目のないヤツばかりだと切って捨てればいいじゃないですか。

そりゃ、あなたが主催した会合ならつらいかもしれませんが、もともと開かれているイベントに参加だけなされば、悲しくなんてありません。

今、私に話しかけてきたあなたは少なくとも・・・最初から負けてはいませんでしたよね。

王女が声をかけてあげたのですよ!といわんばかりの強気の発言でした。」



「まぁ!無礼な発言もなされるのね。
確かに、私はまひる様に教養も魔力も負けてはいません。

わかりました。私はこれから積極的に人前に出るようにします。

そのかわり、1つあなたに命令があります。」


「なんでしょうか?」


「1週間後に行われるドレスメイクパーティーで私を最初にエスコートしてください。

あなたが私を連れて現れれば、私は目立ちます。
そこからは私の勇気の見せどころというわけ。

修行中の多忙なお時間ですから、最初だけでいいと言っています。
お引き受けしてほしい。」


「王女様・・・言い方を訂正していただければすぐに喜んでお引き受けいたしますよ。」


「なんか間違えましたか?」


「はい。命令ではなくて・・・お願いと言った方がとてもかわいいですよ。」


「かわいっ・・・!私にそういうことを・・・失礼です。

でも・・・お願いです。パーティーでエスコートしてください・・・。
だめですか?」


「私でよろしければよろこんで。

あ~しかし・・・私が参加して妙な騒ぎになったりしないかな・・・。」


「その心配は無用です。
ドレスメイクパーティーはお針子のコンテストが主体なのです。

きれいなドレスや個性的な衣装を発表しあって、それをお金持ちや販売するお仕事の方々が購入したり、製作者を雇用したりとビジネス要素が強いです。

それが表向きで、裏はドレスをきれいに着飾った女性を殿方は楽しみにやってくるといったところです。
まひるも参加するときいていますよ。

なんていいましたか・・・こすぷれ?そういう名前の何か用意するとか・・・。」



「はぁ・・・コスプレねぇ。なるほど・・・魔女とか勇者かな・・・。ククッ」


「笑うとステキですわ。」


「えっ?」


「トモは笑うととてもステキだと言っているのです。
じゃ、来週の夕方に西の玄関でお待ちしていますのでいらしてくださいね。」


「かしこまりました。」


菘邸にもどって教官にこの出来事を話すと、教官はとても驚いてパーティー参加はどうしたものかと考えた。

そこへいつきがやってきて、事情を智房からきいたが、いつきはクスクス笑いだした。


「いいと思いますよ。お迎えにいってエスコートしてあげてください。
まひるがきいたら大変なことになりそうですが・・・まぁそれもナミリハ姫が相手となれば大丈夫でしょう。

あのナミリハ姫が・・・そのような積極的にお話されるとは・・・。
トモは姫に愛されてしまったのですね。」


「ええぇぇぇぇぇ!それは・・・困ります。
そんな感じもうけましたけど、俺はそのような気はぜんぜんないし。」


「大丈夫です。ナミリハ姫はご自分の立場をよくわかっていますよ。
最初にエスコートをしてあげて、その後まひるの相手をしてあげてください。」


「でも、俺は修行中の身だし・・・。」


「私が今やってきたのは、その修行のやり方についてあなたと話がしたかったから来たんです。

講義が終わったら私のリビングまで来てください。」


「は、はい。」
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