ミラクルにいこう!
まひるは休日を利用して、まずは智房用の衣類を手作りでたくさん仕上げて、家の用事を片づけ、自分の服にポケットを付けポケット内に手すりのかわりになる小さなホックをつけた。


「これで私と外出もしやすいでしょう?」


「おおーーーっ。ほんとにおまえは器用だな。
これがどうして仕事にいかせてなかったのか不思議でしょうがないよ。」



「もう・・・嫌味ですか。」


「いや、感心してるんだ。すばらしい才能だなって・・・。
もしかして、俺がこんな姿になったのはおまえの才能を見いだせていなかったから神様からお仕置きされたのかもしれないな。」


「まぁ!体のサイズとともにトムはすっかり頭の中までファンタジーになっちゃったんですか?」



「うるさい!長所をほめてやってるのにその言いぐさはなんだ!」



「す、すみません・・・。スーパーに着いたことだし、トムの好きなものを言ってください。
しっかりお料理しますからね~」



「なぁ・・・おまえの料理って食えるんだろうなぁ?」


「それ、失礼すぎますよ。
食べてから文句は言ってください。」


スーパーではまひるが独り会話をしているおかしな女の子だと思われる場面も何回かあったものの、いつもの休日より2人は楽しいと思った。


まひるのダイニングテーブルの上に智房用のテーブルとイスを置いて、小さな料理を用意した。


「う、うまい・・・。いけるよ。」


「ねっ、私は料理もダメダメ子じゃないでしょう?
わかってくださいましたか?」



「うん。ひどいこといって悪かった。
腹がふくれてしまったら眠くなってきた。

あ、寝る前に・・・いろいろまだまだ世話になるけど・・・」


「ストップ!トムは今までみたいに偉そうにしゃべってくれないと、こっちが調子狂っちゃいますよ。

それと、同じお礼をいってくれるんなら、人間サイズにもどってきてから言ってくださいね。」



「まひる・・・。」



智房は発砲スチロールに脱脂綿とタオルをかけたベッドで眠り、月曜の朝がきた。


まひるはいつもと変わらずバタバタと支度をして、出社した。
智房は会社のことが気になるので、まひるのポケットにこっそり入って職場を見ていることにした。


デスクの上のケシゴムの上に課長は座っているというのに、オフィスではいつもの課長のガミガミ声は聞こえない。


まひるは少し悲しくなってしまった。
他の社員たちも、課長の心配をしながら働いていたので職場の雰囲気も暗く沈んでしまっていた。



「なんか・・・申し訳ないな・・・。」



「元気出してください。これって何か意味があると思うんです。
っていっても・・・異変を感じたのは私だけで、トムはとばっちりかもしれない。
申し訳ないのは私の方かもしれないです。」


とりあえず、職場では部長と課長補佐が仕事をこなしていたので、智房はさびしそうな顔をしながらも心配は薄らいだようだった。


夜になり、まひるは智房をポケットにいれて購買課を出たものの、経理課へ提出しておく伝票を思い出して一時的に智房を帳票類を置いてある物品庫の棚に降ろして待っててくれるように頼んだ。

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