ミラクルにいこう!
そんなある意味まひるの思い通りのような世界で、まひるはまず水晶玉で子どもたちを捜した。


そこに存在している大人たちも不思議そうにまひるの方を見ている。


「子どもたちのつかまっているところを示しなさい!」

まひるはすっかり魔法使いになりきっていて、アニメキャラのようにやることが様になっていた。


水晶玉の中に子どもたちの姿が現れ、村のはずれにある廃屋の扉が入口になっているとわかった。

廃屋はとても小さなもので、実際は廃屋の入り口だけがまひるたちの世界と子どもたちのとらえられた空間をつなぐものらしい。


そういえば、まひるの生活している世界からも一瞬で別世界へきてしまったのだから原理は同じようなものなのだろう。


タイムマシンである程度の時間をタイムトリップしてきたわけではない。
光がさした一瞬のことだ。
それに、智房が気づいた勇者や魔法使いの能力が自動的に備わってしまっていることについても、その世界でのあらかじめきまっていた自分の役割の型に一瞬ではまりこんでしまったと考える方が納得がいけた。


鍛冶屋でもまひるたちを待っていたかのように、魔法使いの杖や魔法騎士の剣などが並んでいたので、智房は確信を得た。


「どういう原理かはわからないけど、俺が小さくなって勇者になってしまったことや君が魔法使いになって、君のご都合主義に物事がまわっているところをみると・・・たぶん、ここは君の妄想の世界なんじゃないのかな。」


「なっ…!何なんですか?その言い方!!!
私がこんな世界を夢見てて、課長をまきこんだって言いたいんですか?

そりゃ、RPGの世界を旅して悪者をばったばったと倒し、勇者様とラブラブに~って想像したことはありますけど・・・少なくとも勇者様はそんな私を目の敵にしてイジワルばかりいってくるおっさんではありませんでしたよ!」


「やっぱり想像してたんだろうが!
それに、俺はおまえを目の敵にしてイジワルなんかしていないし、そこまでおっさんじゃないぞ。

おまえがそもそも、ろくにまともな仕事ができないから残業にだってつきあってやってたくらいなんだからな。
感謝こそされてもその言いぐさはないだろ!」


「だって・・・私の妄想世界だなんて・・・何でも思い通りになってるわけじゃないのに。」


「ああ。何でも思い通りだったなら俺はこの世界にもう存在していないかもしれないからな。

世界や動きは君の思い通りっぽいが、俺は俺の意思で行動できてるということは、君が世界の創造主だというわけではないということだ。

この世界の神様ではなく、一魔法使いであった・・・というところに秘密が隠されているんだろうな。」


「わぁ、トムは名探偵みたいね。」


「こらっ、楽しそうにするな。この状況でもし俺たちが子どもたちを助けられなかったらどうなると思うんだ。

きっと殺されてしまうしかないと思うぞ。」



「そ、そんなぁーーー!」
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