寒いね。
――またのご来店よろしくお願いします

彼が言った言葉の意味がわかった。

何回もここにきているから、私のことを知っていた。

名前だってそうだ。

たまに店を予約する時、名乗っていたから。

知ってて当たり前よね。

がっかりしたと言えばがっかりした。

してないと言えばしてない。

自分でもよくわからない気分だ。

「若葉ちゃん、ワイン飲む?」

桃の声が聞こえた。
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