寒いね。
きっと彼氏は、あのハデ女と一緒に笑っていたのだろう。

バカな女だって。

自分の浮気に気づかないバカ女だって。

私のことを指差して笑っていたのだろう。

そう思うと、泣きたくなった。

自分が1番惨めに思えた。

「――平岡さん?」

その声に視線を向けると、背の高い男の人だった。

髪は黒なのに対し、瞳は碧かった。

あまりのアンバランスさにジッと見つめていると、
「寒いね」

その人は笑って、自分の手で私の手を包んだ。

「あの…」

「冷たいね」

そう言った彼の手は、カイロのように温かかった。
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