寒いね。
温かくて…。

「――ッ…」

「平岡さん?」

突然泣き出した私を、彼が驚いたように声をあげた。

誰だって驚くに決まってる。

突然泣き出したら、何事かと思うに決まってる。

「…すみません」

他にどうすることもできないから、謝った。

視界が狭くなる。

「あの…」

彼の胸の中から、彼を見あげる。

碧い瞳が優しくなる。

「泣きたかったら、泣いてください」
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