いつか君に届け
見えない闇
壮ちゃんが遠くへ逝ってしまって二学期が始まったいたがあまり俺は登校する事もなく家に帰る事も少なくなり大輔の家に泊まる事が多くなっていた。大輔は母子家庭で母親はホステスをしていたから自然と大輔の家が俺達仲間の溜まり場になっていたし大輔にも見えない闇がある事を俺はわかっていた。

『おい!慶太郎!お前の女が来たぞ!』

『え?誰?俺に特定の女はいないけど』

『いかれてる女だ!お前あの女はやめとけ。巻き込まれたら厄介だぞ』

『あー。絵里か。やめるも何も1回やっただけなんだけどな。しつこい女だね』

『あっ!慶太郎!やっぱりここにいたんだ!遊びに行こーよ!』

『俺はお前と付き合ってないよ。1回寝たぐらいで勘違いすんじゃねーよ!二度と来るな!』

『うん。そんなの知ってるよ!慶太郎があたしなんかと付き合ってくれるわけないくらいバカなあたしでもわかるよ。ただ今日はちょっと遊びに行きたくなっただけ。ほら!原チャ拾ったよ!これで適当に走ろうよ!』

『俺はバイクには二度と乗らねーんだよ。お前はシンナーで狂ってる。俺が捨てて来てやるから帰れ』

『ごめん。でも今は正気だよ。私が戻してくるよ』

『もうついてくるな!早く帰れ!俺は狂った女と付き合う気なんてねーんだよ』

『おい!君達ちょっと待ちなさい!警察だけど君達はまだ中学生かな?こんな夜遅くに何してるんだ?それにその原付バイクはどうした?』

『あたしがパクってきたんだよ!どこでも連れてけばいいじゃん!』

『俺ですよ。俺が押してるんだから見てわかるでしょ。俺がパクリました』

『とりあえず君達ちょっと話しを聞かせてもらおうか』

大輔!お前の言う通り厄介な事になったよ。俺はまたしばらく出てこれないね。お前らとバカやれないのはつまんないけどまあまたそのうち出てくるからその時はまたよろしくな。壮ちゃん!ごめんなさい。俺、次は鑑別所だよ。バイクに乗る気はもうないんだけど日頃の行いが悪いからこういう事になるんだよね。壮ちゃんがいなくなってからも俺はお仕置きされるような事しかやってないよ。俺はもうダメなんじゃないの?早く迎えに来てよ。俺は何をしたらいいのかわからない。完全に闇の迷路に迷いこんだみたいだよ。

『大輔!慶太郎はそろそろ出てくるかな?』

『さあな。まあ3年になる頃には帰ってくんじゃねーの?もうすぐ春休みだな。恭一!慶太郎は本当に次はあとがない。来年俺達は中学を卒業だ。俺、卒業式は全員で出たい。もし何かあっても慶太郎の事は絶対に吐くな!』

『わかってるよ!俺達なら慶太郎より軽く済むからな。何があっても吐くわけねーじゃん。全員揃って卒業しようぜ。なあ!ユズル!誠!謙也!雄一郎!』

『当然だろ!早く帰ってこいっつうの!あのバカ!』

『ほんとだよ!マジ!バカだ!慶太郎!お前がいねーとつまんねーんだよ!』

俺は中学3年の始業式には戻ってくる事が出来た。一緒に捕まった絵里は薬物を使用していた為更生施設に入ったままだと噂に聞いたがその後絵里と会う事はなくまた嫌な夏休みを迎えようとしていた。俺は誕生日を忘れ気づけば15歳になっていた。

『慶太郎!お前高校どうすんの?』

『高校?そんなの考えてねーよ。行けるかどうかもわかんねーし。鑑別所上がりの少年が高校なんか行っていいんですかね』

『お前なら成績いいんだから行けんだろ?行けよ!』

『はあ?お前は俺の親かよ!大輔くんこそ高校行くんですか?』

『俺は定時制かバカ高校はいちお受験するつもりだぜ!』

『そうなんだ。俺はわかんないね。とりあえず飯食いに行こう!腹減った!奢るよ!ユズル!恭一!お前らも行こうぜ!』

『慶太郎!お前お小遣い貰い過ぎだぞ?マジありえねーから!』

『知るか!だから奢ってやってんじゃねーかよ!今日は大輔ん家で飲もうぜ!いちいち万引きなんてめんどくせー事しなくたって金はあるんだから余計な事をするなよ!ユズル!』

『わかってるよ!慶太郎!タバコもお願いします!』

『なんでも買えよ!俺の金じゃねー。クソじじいの金だ。使いまくりゃいいんだよ』

そして俺達は夏休みに大きな乱闘事件を起こした。相手はどこの誰かもわからないようなグループと大乱闘となった。通報されたのかパトカーのサイレンが聞こえ始めていたがどちらもなかなか折れる事なく殴り合いは続いていた。はぁーあと二人やれば片付くね。

『慶太郎!お前もう逃げろ!あとは俺達でやれる!余裕でな!早く行け!』

『はあ?何言ってんだ?バカか!大輔!俺は別にパクられてもどうって事ねーよ!やっちまうぞ!きっちりカタはつけとかないとね!』

『慶太郎!ふざけんな!お前はもう後がねーんだぞ!次は半年やそこらで出てこれねーんだからな!』

『大輔!お前に借りなんて作らねーよ!俺は1年だろうが2年だろうがどうってことねーんだ。俺にはもうビビるもんなんてねーからな』

『借りじゃねーよ!俺の頼みだ!お前と一緒に卒業してーんだよ!バカ!誠!早く慶太郎を連れて逃げろ!慶太郎!全員で一緒に卒業しよう!頼むよ!俺はお前の親友じゃねーの?親友の頼みをたまには聞けよ!勝手に暴走ばっかりしやがって!頼むよ。慶太郎!』

『大輔。ごめん。俺心配ばっかりかけてるんだな』

『悪いと思うんだったら早く行け!誠!頼むぞ!』

『あー!わかってるよ大輔!慶太郎!行くぞ!来いって!』

俺は大輔の言葉に呆然としていて気づけば誠と2人逃げ切ったようだった。大輔!お前だって次は鑑別所だぞ。卒業式にお前が間に合うのかよ?恭一、ユズル、謙也、雄一郎は保護観察付きだが二学期に入りしばらくして学校に戻ってきた。俺達は大輔の帰りを待ちながら冬休みを迎えようとしていた。

『慶太郎!お前どこを受験するの?』

『あー。まだ決めてない。恭一は?』

『俺は大輔と同じヤンキー高校。ユズルはサーフィンしたいから定時制だってよ。誠と雄一郎は工業高校。謙也は普通科だけど受かるか微妙らしい。お前だけだぞ決めてねーの!それともうすぐ大輔帰ってくるぞ!大輔の母ちゃんが言ってた!正月までに帰ってこれそうだって!』

『マジか?良かった。受験間に合うんだ』

『あー。だからお前もさっさと高校決めろよ!お前が1番頭いいんだから出世して大人になったら俺らに奢れよ!』

『出世しなくてもお前らに充分奢ってるけどな』

『そうっすね!いつもお世話になります!』

『慶太郎!今日いい波来てるらしい!一緒に波乗りいかねー?お前!海好きじゃん!俺もだけど!サーフィンだから健全な遊びだろ?』

『あーそうだな。行こう!ユズル!』

壮ちゃん!俺、仲間と一緒に中学を卒業出来そうだよ。大輔って本当にバカだけどいい奴なんだ。俺を守ってくれたんだよ。仲間っていいもんなんだね。俺、生きてる間はこいつらを大事にするよ。母なる海は今日も優しく俺を包んでくれました。壮ちゃん!俺、高校に行ってもいいのかな?俺の道ってどこにあるの?わからないよ。俺いっぱい悪い事してるからもうかなり尻叩かれる回数増えてるよね?俺が生きてて誰かの役に立つ事なんてあるの?社会の迷惑でしかないんじゃねーの?それでもまだ壮ちゃんは迎えには来てくれないんだね。俺が闇の迷路から抜け出したら希望と言う光が見えるの?その光はどこにあるんだよ!真っ暗で見えないから迷子なんじゃん!壮ちゃん!教えてよ!いつだってわからない事は聞きなさいって言ってたじゃん。自分で見つけなさいって壮ちゃんなら言うのかな?壮ちゃんは俺に厳しかったよね。なんでも自分でやりなさいって見てるだけで手をかしてくれなかった。それは俺の為だったの?俺が1人で生きていけるように厳しかったわけ?1人になるのがわかってたのかよ。ズルイよ壮ちゃん。見守るぐらいしててよ。小さい頃はずっとそうしてくれてたじゃん。手は貸さないけど近くでちゃんと見てくれてたから俺は出来たんだよ。

『大輔!おかえり!ごめん!大輔!ありがとう!』

『ただいま!慶太郎!お前が体験した事を俺も体験しただけだ。いい経験なんじゃねーの。外がこんなにもいいとこだって気づけたしな!慶太郎!一緒に卒業するぞ!』

『あぁー。大輔!俺、高校受験してみるよ』

『おう!違う学校行っても俺らはずっと仲間だ!だから俺はバラバラになっても不安なんかねーよ!』

『そうだな。俺達どんな大人になってんだろうな』

『たいして変わんねーんじゃね?変わらないままでいる事も俺は大事だと思う。まあバカやってねーでちゃんと大人にはならねーといけねーんだろうけど大切なものは変わらないままちゃんと持っていたいっすね。無くしてしまわねーようにな』

『うん。俺もだ。大輔!』

そして俺達は全員揃って中学を卒業し各自希望の高校へと進路を進め俺もなんとかいちお進学校である高校に入学することが出来た。親父が提示してきた3つの進学校のうちのどれかに受からなければ高校の学費は払わないと言われたからだ。壮ちゃん!俺はまだ結局親父の操り人形でしかないんだね。未成年と言う無力さをまた改めて感じたよ。そしてまた怒りに満ちた15歳の俺は高校1年の夏休みに入る頃退学になり16歳になった俺は家を出た。俺にはもう帰る家はどこにもない。それでも壮ちゃんは俺に生きろって言うの?壮ちゃんは言うよね。所詮無力な未成年がどうやって生きていけばいいんだよ。ねえ?壮ちゃん!聞いてる?教えてよ。お願いだから。
< 10 / 36 >

この作品をシェア

pagetop