いつか君に届け
記憶
『あっ!すいません!ぼうっとしてました。申し訳ないです。コーヒーかかっちゃいましたね。本当にすいません。衣装代弁償させて下さい!』
『大丈夫ですよ!衣装だなんて呼ぶ程じゃありませんから。安物の普段着なんだからコーヒーがちょっとかかるぐらい自分でもしょっちゅうやっていますよ』
『いやでも俺が完全に悪いんですから何かお詫びをさせて頂きたいんですが』
『それじゃあおばちゃんとお茶でも飲んで話し相手にでもなってくれる?こんな若いいい男とお話なんか出来る機会なんてないしね。お茶をごちそうして頂けるだけで充分よ!』
『はい。それはいいですけどせめてクリーニング代だけでも受け取って頂けませんか?』
『だから普段着なんだから洗濯機でガラガラ洗うわよ!クリーニングなんか出すわけないじゃない!ほら!あそこのお店のケーキが美味しいの!ケーキセットをごちそうになろうかな。それでお詫びにしましょう』
『あーはい』
俺は打ち合わせのあとに寄った店でコーヒーをテイクアウトし車に向かう途中50代ぐらいと思われる女性とぶつかってしまい少し洋服にかかってしまったから金を渡して仕事に戻りたかったが受け取ってくれそうにないおばちゃんのパワーに負けお茶を付き合う事になってしまった。俺コーヒー持ってるんですけどね。
『私はこのケーキとコーヒーのセットを頂こうかな。あなたは?イケメンって言うんだっけ?あなたみたいなかっこいい男』
『はい?あーありがとうございます。イケメンかどうかはわかりませんけどね。。俺はコーヒーだけでけっこうです。甘い物は苦手なので』
『あらそうなの!美味しいのに!男の子だもんね!二十歳ぐらい?』
『もう今年22になりますけどね』
『あーそうなの!やっぱり若いじゃない!お名前は?』
『慶太郎です。あっ!どうぞ。頂いてください』
『はい!じゃあ遠慮なくいただくわね!慶太郎君か。私が知ってる慶太郎くんももうあなたぐらいになってるわね。懐かしいな。私は今主婦なんだけど昔は幼児教室の先生をやっていたのよ。みんな小学校のお受験をする子ばかりで私が担当していた子の中に慶太郎くんって子がいてねいつも慶太郎くんのベビーシッターさんが送り迎えをしていた子なの。あなたみたいにイケメンの子供だったわよ。同じ教室に通う女の子から人気でバレンタインの時にチョコを貰って泣く子だった。かわいいでしょ!慶太郎くんはチョコレートが嫌いな子でね。シッターさんに諭されて泣きながら受け取っていたの。幼稚園でもいっぱい貰って意地悪されてるって言ってたぐらいよ。シッターさんと言うよりあの方が慶太郎くんのパパみたいだったな。あの方が慶太郎くんの本当のパパだったらお受験は受かっていただろうな。賢い子だったのに残念な事に不合格でね。原因は家庭環境だったと思うわ。慶太郎くんにはいつしか笑顔が消えていたもの。シッターパパさんもそれをすごく心配していたわね。でも慶太郎くんにはあえて厳しく接していたから慶太郎くんにとっては怖いシッターさんだったんだろうな。シッターさんは契約期間があるからって言っててね。それでも私から見たら充分慶太郎くんのパパになってたよ。慶太郎くんが1人で困らないようにって手出ししないようにしていたんだけどやっぱり無意識に出ちゃうもんなのよね。甘やかさないようにしていてもちょっと転んだぐらいなら自分で起きなさいって泣いてる慶太郎くんを待つんだけどある日同じ教室の男の子に押されて少し段差のある入口で転んだ時はすぐさま抱きかかえて痛い所はない?って駆け寄っていたのよ。お受験に失敗した時にはシッターさんがお詫びに来て自分の力不足でしたって慶太郎くんとのお別れがとても辛そうだったのが私は印象に残ってるのよね。心配で仕方がないって言っていたわ。どうしてらっしゃるのかな。シッターさんも慶太郎くんも。あら?私ばっかりベラベラ喋っちゃってごめんなさいね!そちらの慶太郎君もコーヒーを頂いてよ!私がベラベラ喋ってたから冷めちゃったかな』
『先生。俺がその慶太郎ですよ。お久しぶりです。あの頃はお世話になりました』
『えっ!?慶太郎くん?高見慶太郎くん?』
『はい。高見慶太郎です』
『えー!嘘!?信じられない!あの慶太郎くんなの?大きくなったわね!慶太郎くん!どうしてた?シッターさんはお元気でらっしゃるの?あれ以来会う事はなかった?』
『いえ。会えました。12歳の頃壮ちゃんに会う事ができましたよ。でも俺が14歳になった夏の終わりに亡くなりました。先生!俺は壮ちゃんに愛されていた事を最近よく理解できるようになったんです。厳しかったですけどね』
『そうだったの。若くして亡くなられたのね。慶太郎くん!あなたは生きなさいよ!あなたのパパの分まで。あなたは愛されていたわよ。私が見ていてもわかるぐらいにね』
『はい。俺は愛されていました。だから今まで生きてこれました』
突然のアクシデントで出会いなぜだかコーヒーを共に飲む事になった女性は俺を担当してくれていた恩師だった。語りだしてくれなければ全然気づく事はなかっただろうな。先生はいつも俺を褒めてくれていたね。わがままな俺を相手に教えるのは大変だったでしょ。先生は最後に合格させてあげられなくてごめんねと言った。先生!俺が努力を怠ったんですよ。俺の知らない壮ちゃんの想いを教えて頂きありがとうございます。先生もまた俺の知らない所で心配してくれていた1人だったんですね。俺の事をずっと覚えていてくれてありがとうございます。壮ちゃん!俺は壮ちゃんに抱っこしてとねだってもしてくれない時が多かった記憶の方が強く残っているけど俺の気づかないうちになにかと抱っこしてくれていたんだね。そういえば俺はよく車の中で眠っていたから眠くてグズっていたし寝ぼけてるしで覚えてないだけか。気づけば部屋にいたり教室の入口にいたもんね。壮ちゃんが抱っこしてくれていたんだ。俺の記憶ではお尻を叩かれる時に無理やり抱きかかえられる記憶の方が強いよ。だってそっちの方が断然多かったでしょ?でも先生と話しているうちにあの頃の壮ちゃんの温もりを思い出したよ。壮ちゃんに抱かれている俺は安心していた。壮ちゃん!もうすぐ桜も満開になりそうです。一瞬の美しさと一瞬の儚さを合わせ持つ桜はなんだか不思議だね。人間に何かを伝えようとしているような気がするよ。なんだろうね。
『大丈夫ですよ!衣装だなんて呼ぶ程じゃありませんから。安物の普段着なんだからコーヒーがちょっとかかるぐらい自分でもしょっちゅうやっていますよ』
『いやでも俺が完全に悪いんですから何かお詫びをさせて頂きたいんですが』
『それじゃあおばちゃんとお茶でも飲んで話し相手にでもなってくれる?こんな若いいい男とお話なんか出来る機会なんてないしね。お茶をごちそうして頂けるだけで充分よ!』
『はい。それはいいですけどせめてクリーニング代だけでも受け取って頂けませんか?』
『だから普段着なんだから洗濯機でガラガラ洗うわよ!クリーニングなんか出すわけないじゃない!ほら!あそこのお店のケーキが美味しいの!ケーキセットをごちそうになろうかな。それでお詫びにしましょう』
『あーはい』
俺は打ち合わせのあとに寄った店でコーヒーをテイクアウトし車に向かう途中50代ぐらいと思われる女性とぶつかってしまい少し洋服にかかってしまったから金を渡して仕事に戻りたかったが受け取ってくれそうにないおばちゃんのパワーに負けお茶を付き合う事になってしまった。俺コーヒー持ってるんですけどね。
『私はこのケーキとコーヒーのセットを頂こうかな。あなたは?イケメンって言うんだっけ?あなたみたいなかっこいい男』
『はい?あーありがとうございます。イケメンかどうかはわかりませんけどね。。俺はコーヒーだけでけっこうです。甘い物は苦手なので』
『あらそうなの!美味しいのに!男の子だもんね!二十歳ぐらい?』
『もう今年22になりますけどね』
『あーそうなの!やっぱり若いじゃない!お名前は?』
『慶太郎です。あっ!どうぞ。頂いてください』
『はい!じゃあ遠慮なくいただくわね!慶太郎君か。私が知ってる慶太郎くんももうあなたぐらいになってるわね。懐かしいな。私は今主婦なんだけど昔は幼児教室の先生をやっていたのよ。みんな小学校のお受験をする子ばかりで私が担当していた子の中に慶太郎くんって子がいてねいつも慶太郎くんのベビーシッターさんが送り迎えをしていた子なの。あなたみたいにイケメンの子供だったわよ。同じ教室に通う女の子から人気でバレンタインの時にチョコを貰って泣く子だった。かわいいでしょ!慶太郎くんはチョコレートが嫌いな子でね。シッターさんに諭されて泣きながら受け取っていたの。幼稚園でもいっぱい貰って意地悪されてるって言ってたぐらいよ。シッターさんと言うよりあの方が慶太郎くんのパパみたいだったな。あの方が慶太郎くんの本当のパパだったらお受験は受かっていただろうな。賢い子だったのに残念な事に不合格でね。原因は家庭環境だったと思うわ。慶太郎くんにはいつしか笑顔が消えていたもの。シッターパパさんもそれをすごく心配していたわね。でも慶太郎くんにはあえて厳しく接していたから慶太郎くんにとっては怖いシッターさんだったんだろうな。シッターさんは契約期間があるからって言っててね。それでも私から見たら充分慶太郎くんのパパになってたよ。慶太郎くんが1人で困らないようにって手出ししないようにしていたんだけどやっぱり無意識に出ちゃうもんなのよね。甘やかさないようにしていてもちょっと転んだぐらいなら自分で起きなさいって泣いてる慶太郎くんを待つんだけどある日同じ教室の男の子に押されて少し段差のある入口で転んだ時はすぐさま抱きかかえて痛い所はない?って駆け寄っていたのよ。お受験に失敗した時にはシッターさんがお詫びに来て自分の力不足でしたって慶太郎くんとのお別れがとても辛そうだったのが私は印象に残ってるのよね。心配で仕方がないって言っていたわ。どうしてらっしゃるのかな。シッターさんも慶太郎くんも。あら?私ばっかりベラベラ喋っちゃってごめんなさいね!そちらの慶太郎君もコーヒーを頂いてよ!私がベラベラ喋ってたから冷めちゃったかな』
『先生。俺がその慶太郎ですよ。お久しぶりです。あの頃はお世話になりました』
『えっ!?慶太郎くん?高見慶太郎くん?』
『はい。高見慶太郎です』
『えー!嘘!?信じられない!あの慶太郎くんなの?大きくなったわね!慶太郎くん!どうしてた?シッターさんはお元気でらっしゃるの?あれ以来会う事はなかった?』
『いえ。会えました。12歳の頃壮ちゃんに会う事ができましたよ。でも俺が14歳になった夏の終わりに亡くなりました。先生!俺は壮ちゃんに愛されていた事を最近よく理解できるようになったんです。厳しかったですけどね』
『そうだったの。若くして亡くなられたのね。慶太郎くん!あなたは生きなさいよ!あなたのパパの分まで。あなたは愛されていたわよ。私が見ていてもわかるぐらいにね』
『はい。俺は愛されていました。だから今まで生きてこれました』
突然のアクシデントで出会いなぜだかコーヒーを共に飲む事になった女性は俺を担当してくれていた恩師だった。語りだしてくれなければ全然気づく事はなかっただろうな。先生はいつも俺を褒めてくれていたね。わがままな俺を相手に教えるのは大変だったでしょ。先生は最後に合格させてあげられなくてごめんねと言った。先生!俺が努力を怠ったんですよ。俺の知らない壮ちゃんの想いを教えて頂きありがとうございます。先生もまた俺の知らない所で心配してくれていた1人だったんですね。俺の事をずっと覚えていてくれてありがとうございます。壮ちゃん!俺は壮ちゃんに抱っこしてとねだってもしてくれない時が多かった記憶の方が強く残っているけど俺の気づかないうちになにかと抱っこしてくれていたんだね。そういえば俺はよく車の中で眠っていたから眠くてグズっていたし寝ぼけてるしで覚えてないだけか。気づけば部屋にいたり教室の入口にいたもんね。壮ちゃんが抱っこしてくれていたんだ。俺の記憶ではお尻を叩かれる時に無理やり抱きかかえられる記憶の方が強いよ。だってそっちの方が断然多かったでしょ?でも先生と話しているうちにあの頃の壮ちゃんの温もりを思い出したよ。壮ちゃんに抱かれている俺は安心していた。壮ちゃん!もうすぐ桜も満開になりそうです。一瞬の美しさと一瞬の儚さを合わせ持つ桜はなんだか不思議だね。人間に何かを伝えようとしているような気がするよ。なんだろうね。