いつか君に届け
実家
お義母さんの葬儀が終わった。1週間後には龍之助と虎之助の双子が入学式。次の日には悠之心の始業式か。ヤバイな。俺に出来るのか?とりあえずまた引越しだ。まあ千佳と別れて引越した後にまだ片付けてねーから段ボールはそのままだし楽っちゃあ楽だけど。お義母さんは俺が10歳の頃親父と結婚し家で暮らすようになったんだ。

『こんばんは!おかえり!慶太郎くんだよね?遅くまで塾に行ってるんだってね。今日から一緒に暮らす事になったの。慶太郎くんと慎二郎くんのお母さんになれるように頑張るからよろしくね』

『はい。よろしくお願いします。でも僕の事は気にしないで下さい。いないものと思ってくれた方がいいです。僕には家政婦の方がいますから問題なく暮らしていけます。それに毎日帰りは22時を過ぎるし夕飯も必要ありません。途中で買って食べているので大丈夫です。慎二郎のお義母さんになってやって下さい。じゃあ僕はお風呂に入って勉強します』

『あっ、うん!受験するんだよね。頑張ってね!』

『はい。ありがとうございます』

『慶太郎!入るぞ!お前!お義母さんにいないものと思ってくれと言ったらしいじゃないか。どういうつもりなんだ?説明しただろ。新しいお義母さんが来るって。嫌なのか?』

『嫌じゃないです。ただ僕には関係ないでしょ。僕にお母さんはいるし生活にだって不便を感じていません。だから僕の世話は必要ないです。赤ちゃんが生まれるんでしょ。僕は迷惑をかけたくないので今まで通りの生活をするだけです』

『もういい。わかった。お前は今まで通りの生活をすればいい。ただしお母さんに会う事は禁止だ。中学受験に合格しなければ会えないと思っておきなさい。お母さんも合格するまでは会わないと言っていた。今度こそ合格しなければお前はもう大人になるまでお母さんには会えないぞ。しっかり勉強しなさい』

『わかりました』

お母さん。僕頑張ります。次は絶対受かってみせるから僕を許して下さい。小学校受験に受からなくてごめんなさい。慎二郎もダメだったからお母さんとお父さんは離婚したんだよね?壮ちゃん!どこにいるの?どうして僕に会いにきてくれないの?僕が受験頑張らなかったから壮ちゃんも怒ってる?ごめんなさい。僕は私立に落ちてお父さんとお母さんにいっぱい怒られた。壮ちゃんが居なくなってからは家政婦のおばさんが僕の食事とか洗濯物を持って来てくれたり掃除をしてくれたりしています。1年生から塾にも行っているよ。次は慎二郎の受験があるからって僕は1年生になってからずっと自分の部屋で食事をして下に降りるのはお風呂に入る時だけ許された。トイレは2階にもあるし別に困る事はなかったよ。ただいつ許されるのかがわからなかった。3年生から塾の帰りが遅くなってきたから夕飯は外で買って食べなさいって言われました。家政婦のおばさんが朝食だけは部屋に置いて帰ってくれていたからちゃんとご飯も食べていたよ。お昼は学校の給食があるし夕飯はコンビニやハンバーガーを買ったりして塾の帰りに食べていました。僕には休みはないから毎日同じ生活です。夏休みや冬休みも朝から塾で毎日変わりません。壮ちゃん!僕が中学受験に受かったら今度こそお母さんとご飯を一緒に食べられるの?壮ちゃんは僕が幼稚園の頃に大事な時期だからって言っていたでしょ?でも僕が頑張らなかったからお母さんとお父さんを怒らせてしまったし一緒に食べられないんだよね?だから次は中学受験頑張ります。今度は絶対に頑張るから壮ちゃんも許して下さい。僕に会いに来てよ。壮ちゃん会いたいです。お父さんはお母さんと会うのは禁止だって言うけど僕はお母さんに会ってもらえてないんだ。電話で慎二郎だけマンションに連れてくるようにいわれてオートロックの鍵をあけて部屋の前に連れて来たらインターホンを鳴らしてすぐに帰るように言われていたから。鍵は僕が持っていたんだけど開けたら怒られると思って僕はお母さんの言う通りにしていたよ。でももう新しいお義母さんが来たから慎二郎も会えないんだろうな。

『慶ちゃん!あけていい?』

『あっ!はい。何ですか?』

『今日は塾に行く前に少しでもご飯食べて行かない?早めに作ったんだけど』

『僕はいいです。もう出ますから。ありがとうございます。あの僕の事は気にしないで下さい』

『そう。じゃあ気をつけてね。行ってらっしゃい!』

『はい』

お義母さん!俺はあの頃からあなたにどう接していいのかわからなかったんです。だからあなたを避けていました。俺はあの家に居てはいけない存在だったからあなたの優しさに応えられませんでした。俺の実家は俺の家ではなかったんです。だからお義母さんが悪いんじゃないのに俺はあなたを傷つけていましたよね?すいませんでした。
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