いつか君に届け
生き方
『慶太郎!制服はどうするんだっけ?これは置いているの?それとも落ちてるのか?』

『後でやるよ!ソファーにかけてんだから置いてるに決まってんじゃん!いったぁー!』

『制服は自分の部屋のハンガーにちゃんとかけておくように言ってあるよね?早くしておいで。それにソファーから落ちてるよ。シワになっちゃうしちゃんと習慣にしなさい。幼稚園の頃は出来ていたんだけどね。家政婦任せにしていたから出来なくなったんだろ?自分の事は自分でやるようにちゃんと躾たんだけどな』

『わかったよ!やる!ねえー壮ちゃん!人間は死んだらどこへ行くの?天国って本当にあるの?』

『俺も死んだ事がないからわからないよ。ただ天国と呼ばれる場所はあるんじゃないかと思ってるよ。反対に地獄って呼ばれる場所もあるんだろうし。どちらに行けるかはやっぱりその人の生き方次第なんだろうね。あっちの世界では金は通用しないだろうから金を持ってるから天国に行けるわけではないだろうし。慶太郎どうしてそういう事を聞くの?』

『別に。ちょっと聞いただけ』

『そう。じゃあ俺の知ってる事だけを話すからちゃんと聞いてくれる?』

『うん!』

『臨死体験って言葉を聞いた事があるよね?そこでよく言われるのはお花畑があったとか川があったって聞くだろ?俺の知り合いで実際臨死体験をしたかも知れないって人がいるんだけどその人の話しではこの俺達が生きている世界に咲いてる花ではなくて見た事のないような花で見方によっては不気味だしでも色が鮮やかで色も濃くてまるで造花のように独自に造られたような形の花が咲き乱れていて死ぬのかな?もう死んでるのかな?って思っていたら知らない人に一緒に行こうと言われて川の向こう岸に誘われたんだって。でも知らないおじさんだし見た事のない花が咲き乱れている今自分がいる場所はあかるいのに知らないおじさんが誘う川の先は明らかに真っ暗だったから行かないって言ったんだ。そしたらその知らないおじさんは消えてしまって今度は自分が知ってる亡くなったおばあちゃんがこっちじゃない。戻りなさいと言って指さす方を見たら眩しいぐらいの光りが見えてその光りに向かって歩きだしたら目が覚めていたって話していたよ。あれはただの夢だったのかもう少しであっちの世界に行きかけていたのかわからないけどまだ自分は生きろと言う事だけはわかったって言っていたね。だから俺は死んだおばあちゃんが出てきて指さすぐらいだから死んでも俺達には見えないんだけどきっと表裏一体なんじゃないかと思ってるよ。あっちの世界からはこっちの事が見えているんじゃないかな?たまにこっちの現実世界の人間でも言わゆる幽霊ってのが見えたって人は沢山いるんだからあっちからもこっちの事が見えているのはおかしくはないと俺は思う。病院で働いている以上人の生死に関わる場所だけに俺自身もありえない不思議な事を目にした事もあるから死んだら終わりではない事だけはわかる。その人はその人のままなんじゃないかな。肉体が無くなってもね。わかるかな?』

『わかんないけどわかる感じ』

『お天道様が見てるって言われるようにいい事も悪い事も見られてるんだよ。きっとね。だから悪い事はするんじゃない!わかった?慶太郎!一緒にお風呂入ろうか?』

『うん。わかったよ!してないじゃん!』

『慶太郎くん本当ですか?生きてる俺をだませても亡くなったご先祖様や神様はだませないんだぞ。ほら!入るよ!』

お義母さん!壮ちゃんの話しはちょっとわからない事もあるけど死んで終わりじゃない事は俺もなんとなくわかります。だって俺が見たお母さんもリアルすぎたしこのまえ智也を教室でみました。やっぱりあれは夢ではないんだと思います。だから俺はまだ許されていないと思いました。自殺したお母さんと事故で亡くなった智也では表情が全然違いました。怒っているお母さんと笑っている智也では死んだあとにたどり着く場所も違うんじゃないかって思っています。俺も壮ちゃんにお仕置きばっかりされてるから天国にはいけないのかも知れません。生き方って難しいです。俺は正しく生きてる自信はありません。

『兄貴?兄貴!大丈夫?目覚めた?兄貴わかる?』

『え?慎二郎?あれ?俺どうした?なんで?』

『倒れたんだよ。お義母さんの葬儀が終わって火葬場で見送って帰る途中に。兄貴仕事も忙しいし寝てなかったんでしょ?過労だって』

『そう。俺はどれくらい寝てたの?悠達は?あいつらはどうした?』

『三時間ぐらいかな?点滴も終わったよ。悠達は近くのコンビニ行ってくるって』

『そっか。3時間か。もっと長い時間過ぎてるのかと思った。倒れた記憶なんか全然ねーや。帰るか。慎二郎!金払ってきてくれ。俺の車はどこ?』

『ちょっと待ってよ。先生呼んでくるから。帰れるかわかんねーじゃん』

『慶兄!大丈夫?』

『慶太郎兄ちゃん!起きたの?』

『慶太郎兄ちゃん!お菓子買ってきたよ!1つあげようか?』

『悠!龍!虎!俺は大丈夫。ありがとう。心配かけたね。虎!俺はいいから虎が食べな。俺達の家にみんなで帰ろうか』

『うん!帰ろう!』

お義母さん!俺は自分の罪を再認識しました。あなたに対して本当にダメな俺しか見せていませんでした。これからあなたの宝を守る俺を見て下さい。結局素直になれずご迷惑とご心配をおかけしました。申し訳ないです。俺の生き方はこれからお義母さんにも見られるんですよね。壮ちゃん!夢だったはずなのになんでこんなに尻が痛いんですか?壮ちゃんも怒ってるの?まあ俺怒らせる事をいっぱいしてきたもんね。こんなもんじゃ済まないよって警告ですか?わかってますよ。

『慶太郎くん!目覚めたかい?』

『あっ!奥田先生!すいません。俺ご迷惑をおかけしました。もう大丈夫です。帰ります。こいつらを守らないといけないんで』

『うん。そうだね。けっこう無理してきたんでしょ。たまには休みも入れなきゃダメだよ。壮一郎に怒られてたの?』

『はい。怒られてました。でもまた思い出しました。壮ちゃんは親バカでした。俺のお父さんは壮ちゃんだと12歳の俺はちゃんと認識していました』

『そう。良かった。今日はたまたま僕も壮一郎の夢を見て目覚めて出勤したら慶太郎くんが運ばれてきました。壮一郎が僕にお説教するよう言ってるのかな。もっと体をいたわりなさいとね』

『はい。そうですね。すいません。反省して壮ちゃんにも謝っておきます。先生!ありがとうございました』

『はい!無理しないで頑張ってください。無理する事と頑張る事は違うんだよ。慶太郎くん!覚えておいてね』

『はい。すいませんでした』

壮ちゃん!ごめんなさい。俺を休ませてくれたんだね。確かに限界きてました。すいませんでした。でも頑張ります。
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