輝く光の中で
side ローズマリー

私は、小さい頃から、兄が大好きであった。

いつも優しくて、私の事を『マリー』と、呼び、いつも
一緒に居てくれた。

小さい頃は、両親が王室の仕事で家を留守にすることが
多く、両親と一緒に過ごす時間は、本当に少なかった。

でも、いつも兄が一緒に居てくれたので、寂しいと
あまり感じたことはなかった・・・・。

兄が、留学先で事故に遭われ、我が家に運ばれてきたときは
驚いたが、命に別状はなく、とりあえず安心していた。

事故の状況も、私は、詳しくは知らされなかったが、多分
恋人と一緒に旅行に行き、その時事故に遭ったのは想像できた。

そうでなければ、早々にクレメレンに帰って来るはずはない。

ましてや、眠ったままの状態で帰って来るなんて、ありえない。

目を覚ました、兄は、まるで別人のようだった・・・・。

この屋敷は、私と兄の二人に、使用人が何人かで住んでいる。

兄が帰って来てからは、側近のセドリックとエリオットも
ここに住んでいる。

二人は、目が覚めた兄の部屋で何があったのかは言わないが
秘書のエドワードも兄を訪ねた時から、兄は、三人に怒鳴り
終いには、寝室に鍵をかけ、食事も一切取らなくなった。

毎日、セドリック達とのやり取りを聞いて、兄の怒鳴り声に
物を投げつける音、全ての事が信じられなかった・・・。

側近の二人に聞いても、詳しくは話してはもらえず、仕方なしに
両親に話を聞きに行ったが、そこでも詳しくは教えてもらえなかった。

そしてとうとう、兄は、倒れてしまい、病院へ運ばれた。

それからは、入院しているので、とりあえずは安心していたが
何せ、回復が遅く、両親たちも苛々していた時に、兄が病院を
抜け出した。

「お父様、いったいお兄様に何があったんですか?
 教えてください。今のお兄様は、別人です。お父様!」

それから、やっと重い口を、父は開いた。



< 112 / 239 >

この作品をシェア

pagetop