輝く光の中で
セドリックが帰ったあと、何もする気が起きず、ただ茫然と
していたら、アルが帰って来た。

我に返って、「お帰りなさい」と出迎えたら、アルが怪訝そうな顔をして

「万梨阿、何かあったのか?」

「えっ、どうして?」

「だって、泣いているじゃないか?」

「えっ・・・・・」驚いていたら、アルが指で私の涙を拭い
頭の上にキスを落した。

「どうした?何があった?」

まさか、セドリックが来たとは言えず、「日本で飼っていた犬が
亡くなったって、さっき智から電話があったの・・・」

「そうか・・・。可愛がっていたのか?」

「うん。ショックだった・・・・」

そう言うと、優しくアルは、私を抱きしめ、背中を撫でてくれた。

この温もりを、近い未来、手放さなくてはならない・・。

胸が張り裂けそうに、痛い・・・・。

でも、残された時間は、あと僅か。

それなら、悔いが残らないよう、アルを思いっきり愛し、
二人で過ごした思い出を、少しでも多く残したい・・・。

そう心に決め、私は残された日々を、ただアルの為だけに
生きようと決心した。
< 84 / 239 >

この作品をシェア

pagetop