月夜の翡翠と貴方【番外集】
「……着いたね…」
一方のジェイドは、懐かしい街の空気に、惚けたように辺りを見回していた。
ここは、チェーリスの街。
街はさほど大きくはないが、この辺りでは唯一の劇場がある。
二ヶ月ほど前に、遠方から帰ってきた劇団が、公演をしている。
…つまりは、ラサバとスジュナが住んでいる街。
ふたりとその劇団一家に、会いに来たのである。
「まさか、本当に来れると思わなかった」
見覚えのある噴水公園のそばを歩きながら、辺りを眺める。
確かに行きたいと言って、じゃあ行こうか、となったのは覚えているけれど。
「まあ、半月以上かかったけどな」
ルトが、隣で苦笑いをする。
彼のいう通り、ここに来るまで半月以上かかってしまった。
この街を出たときから約一ヶ月後に『再びこの街に来よう』と言ったのだから、寄り道せずとも半月はかかる。
わかっていたが、さすがに疲れた。