月夜の翡翠と貴方【番外集】
「突然で、すみません。お久しぶりです」
「いいのよー、今日は公演もないし、稽古だけだから!来てくれて嬉しいわ」
ふふ、と魅力的な笑みで微笑むクランは、この劇団の女役者だ。
するとそこで、今度は二階から激しい物音がし始めた。
「ちょ、ちょっと待って、パパ!スジュナ今いくから!おねえちゃんとおにいちゃん、どっかいかないでねっ」
…ここの劇団の人々は、何故慌て始めるとこうも激しく物音を立てるのだろう。
やがてその少女は、階段へ姿を現した。
…あ。
髪が少し、伸びたかな。
金髪碧眼の少女は、私達を見るなり顔を明るくした。
「きゃあ!おねえちゃん、おにいちゃん!」
興奮のあまりか、急いで階段を降りようとする。
しかし、途中でずるっと足を滑らせた。