月夜の翡翠と貴方【番外集】
「命の恩人って、大袈裟だな」
笑いながらスジュナを降ろすと、ルトは未だに驚いた顔をしている少女へ「久しぶり」と言った。
私も腰を下ろしてスジュナと向き合うと、「久しぶり、スジュナちゃん」と笑いかけた。
少女は私とルトの顔を交互に見たあと、その瞳にうるうると涙をにじませた。
「…ひ、久しぶりぃ………」
…涙脆くなったのは、父親の影響だろうか?
ジェイドが優しく微笑むと、ぎゅうう、とその身体に抱きつく。
よしよしと頭を撫でながら、ジェイドは暖かな気持ちで少女を見た。
…懐かしい。
また、会えてよかった。
もう会えないかと、思っていたから…
それから四人で他愛のない話をしていると、奥から小さな足音と共に、高く可愛らしい少女の声が聞こえた。
「姉さん、兄さん?誰かお客様がいらっしゃっているの?」
赤茶色の髪に、少しつり目な大きな瞳。
小柄な姿をした彼女は、私とルトを見て、言葉を失ったように口を半開きにしながら、固まってしまった。