月夜の翡翠と貴方【番外集】
「あら、ロゼ」
クランがその少女を見て、名前を呼ぶ。
…ああ、そうだ。
ロゼと呼ばれたこの少女は、説得の際に部屋の中心で声を荒げていた、あの小柄な彼女だ。
「ジェイドさんと、ルトさんよ。遊びにきて下さったの」
覚えているでしょう?とクランが問いかける。
ロゼは私達を見てうろたえながら、「覚えているわよ」と唇を尖らせた。
「…お久しぶりです。突然で、ごめんなさい」
一応挨拶をすると、ロゼは少しだけ困ったように眉を下げた。
けれど、すぐに気丈な態度で「気にしないで下さい」と言ってくれた。
「あなた方には、いつ訪ねてきてくださっても丁重にお迎えするよう、父さんに言われていますから」
…あの団長の男も、見かけによらず優しいひとだ。