月夜の翡翠と貴方【番外集】
「ありがとうございます」
「…いえ」
相変わらず目は合わせてくれないが、さすがに私達を追い出そうとは思っていないようだ。
ほっと息をついた時、腕の中でスジュナが俯いているのに気づいた。
「…スジュナちゃん?」
するとスジュナは、肩をびくっと震わせる。
「…………」
…けれど、何も言ってくれない。
どうしたんだろうか、と思って横を見ると、ロゼが気難しい顔をして、こちらを見ていた。
…いや、私の腕の中で俯いたままの、スジュナを見ていた。
何か言いたげに唇を開いて、けれどまた閉じる。
やがてロゼは小さくため息をついて、「クラン姉さん」と言った。
「こんなところで立ち話もなんだし、稽古でも見ていただいたらどうかしら。そろそろ、休憩も終わる頃よ」
その言葉に、クランが「あら、それはそうね」と明るく返事をする。