月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…その相手が、ね………」
クランがそう呟いたとき、スジュナの前にロゼが立った。
スジュナは少し驚いたような顔をしたあと、おずおずと飲み物を差し出す。
…しかしその目は、ロゼの目をみていない。
その場にいる皆が、ふたりの光景を見守っている。
ロゼはその顔を不機嫌に染めて、スジュナを黙って見下ろしていた。
…その様子を見つめるクランの顔は、不安気な色をしている。
ジェイドの頭に、ひとつの可能性が巡った。
…ま、まさか。
ロゼはさらに眉を寄せると、次の瞬間、スジュナの手から荒々しく飲み物をとってしまった。
「!ロ…ロゼ!」
ラサバが「そんな態度、しなくていいじゃないか」と困ったように眉を下げる。
ロゼはそんなラサバを横目に、「ふん」とでもいいそうな顔で、スタスタと稽古場の奥へと去っていった。