月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…あ……わ、私…」
震えた声と、スジュナを見つめるその揺らいだ瞳も。
まるで、強気な彼女ではないような。
何かに、怯えているような。
ロゼの瞳に、涙が溜まる。
スジュナの瞳にも、じわじわと涙が浮かんでいく。
ロゼはわなわなと痙攣する自身の両手を見つめ、そして、スジュナを見つめた。
やがて唇を噛んだロゼは、震える足を動かして、スジュナに背を向ける。
そして走り出すと、部屋の奥へ逃げ込むように、その姿を消した。
「ロゼ!!」
クランがその後ろ姿へ、叫びにも近い声で呼ぶ。
しかし部屋の奥から返事はなく、うなだれるように肩を落とした。
他の団員たちもどうしていいかわからずに、部屋の奥を見つめたり、稽古場の中央で俯くスジュナを交互に見たりしている。
ラサバは戸惑いを隠せずに、その場からスジュナを見つめていた。
「スジュナちゃんっ……」
ジェイドが駆け寄るが、スジュナは何も言わずに俯くだけ。
…泣いて、いない?
いや、涙を隠しているのだろうか。