月夜の翡翠と貴方【番外集】


ルトは「だよね」と苦笑いを浮かべると、私の手を引いて港の方へと歩き出した。



港には、たくさんの船が止まっていた。

漁船や旅客船、商船に国の船。

旅客船の近くには貴族達がぞろぞろと集まっている。

だからか、諸処に役人らしき人間が立っていた。


「げー…お役人さんいるじゃーん…」


ルトがあからさまに苦い顔をする。

前々からそうだが、ルトやミラゼなど、何故か依頼屋の人間は役人を避ける。

私の手を引いて旅客船から離れると、漁船が並ぶ岬の方へ歩いて行く。


「…そんなに、役人と会うのはまずいの?」


訊くと、ルトは乾いた笑みを零して「そりゃーね」と言った。


「…役人からすれば、俺らみたいな裏の奴らは、なにより捕まえたい罪人だしね」


…敵がたくさんいるな、と思った。

ルトはいつだって、気の休まらない生活をしているのだ。


< 14 / 455 >

この作品をシェア

pagetop