月夜の翡翠と貴方【番外集】


「…お疲れ様」


父のその言葉に、ぶわ、とスジュナの目に涙が浮かんだ。

すぐにスジュナは首を横に振ると、「ごめんね」と震えた声で言う。

「ごめんね、パパ。スジュナ…ごめんなさ…っ」

言い終わらないうちに、ラサバがスジュナを抱きしめた。


「…いいんだよ。充分だよ、スジュナ」


スジュナは目をつぶって、ラサバを抱きしめ返した。



…ぎゅ、と、ルトの手を握る。

すぐに、同じくらいの強さで握り返される。


私は、静かにふたりの姿を見ていた。







劇団の稽古が全て終わるまで、別室でラサバの代わりにスジュナを見ていた。

そうして稽古が終わり、スジュナもだいぶ落ち着いてきた日暮れ頃。



「ちょっと、いい?」

部屋から出るよう、クランに呼ばれた。


「何かあったんですか?」


二回の廊下で、壁にもたれたクランを見つめる。

彼女は静かに首を横に振ると、神妙な面持ちで「話しておきたいことがあって」と言った。






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