月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…お疲れ様」
父のその言葉に、ぶわ、とスジュナの目に涙が浮かんだ。
すぐにスジュナは首を横に振ると、「ごめんね」と震えた声で言う。
「ごめんね、パパ。スジュナ…ごめんなさ…っ」
言い終わらないうちに、ラサバがスジュナを抱きしめた。
「…いいんだよ。充分だよ、スジュナ」
スジュナは目をつぶって、ラサバを抱きしめ返した。
…ぎゅ、と、ルトの手を握る。
すぐに、同じくらいの強さで握り返される。
私は、静かにふたりの姿を見ていた。
*
劇団の稽古が全て終わるまで、別室でラサバの代わりにスジュナを見ていた。
そうして稽古が終わり、スジュナもだいぶ落ち着いてきた日暮れ頃。
「ちょっと、いい?」
部屋から出るよう、クランに呼ばれた。
「何かあったんですか?」
二回の廊下で、壁にもたれたクランを見つめる。
彼女は静かに首を横に振ると、神妙な面持ちで「話しておきたいことがあって」と言った。