月夜の翡翠と貴方【番外集】
…話しておきたい、こと?
クランは私達をまっすぐに見つめて、口を開いた。
「…あのね。うちの劇団の団員は、皆孤児院出身なの」
私とルトは、目を見開く。
「孤児院出身って…え、血繋がってないってことか」
ルトの言葉に、クランは「ええ」と頷いた。
「うちの家に『母』となる女性がいないことは、気づいている?」
ルトと、顔を見合わせる。
訊いてよいものかわからなかったが、それらしき女性を見ることがなかったのは事実だ。
頷くと、彼女は目を伏せて話し始めた。
「…父には昔、恋人がいたらしいの。けれど事故で亡くしてしまって…当時有名な劇団に所属してた父は、そこを抜けて新しい劇団をつくった」
クランによると、団長の恋人であった人は、孤児院出身だったらしい。
そこで、彼は各地の孤児院を巡り、今の劇団をつくったのだ。
考えてみれば皆、髪の色も、瞳の色も、顔立ちも違う。
孤児によってつくられた劇団なら、それも頷けた。
「劇団の者たちは、私が十三になるとき、このことをきかされたわ…ちなみにラサバは、父の子よ。その恋人との間に生まれた子」
…ラサバの、紅い瞳を思い出す。
団長と、同じ瞳だ。