月夜の翡翠と貴方【番外集】


凛とした、気の強い彼女の瞳の色。

ロゼは俺の目を見て、しっかりと頷いた。


「…私、あの子と『家族』になるわ。『姉』に、なってみせる」


その瞳からはもう、怯えた色は消えていた。







「…『どれい』って、やっぱり嫌われ者だね」


夜空を見上げて、スジュナはぽつりと呟くように言った。


「……そうだね」

ジェイドはスジュナを膝の上に座らせ、一緒に窓の向こうを見つめる。


「…スジュナはいつになったら、『どれい』じゃなくなるのかなぁ…」

…『奴隷』でなくなるとき、か。

スジュナは私を見上げて、「おねえちゃんはいつだと思う?」と言った。

「大人になったとき?おばあちゃんになったとき?」

「…んー…そうだね…もしかしたら、もう奴隷じゃないかもしれないね」

そう言うと、スジュナは首をかしげた。

私は、小さく笑う。

「だってもう、スジュナちゃんはラサバさんの『娘』でしょう?」

ラサバとスジュナの関係はもう、奴隷と主人のそれではない。

ラサバはスジュナの『父』であり、スジュナはラサバの『娘』。

仮にそれが、奴隷屋を通じてできたものでも、だ。



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