月夜の翡翠と貴方【番外集】
凛とした、気の強い彼女の瞳の色。
ロゼは俺の目を見て、しっかりと頷いた。
「…私、あの子と『家族』になるわ。『姉』に、なってみせる」
その瞳からはもう、怯えた色は消えていた。
*
「…『どれい』って、やっぱり嫌われ者だね」
夜空を見上げて、スジュナはぽつりと呟くように言った。
「……そうだね」
ジェイドはスジュナを膝の上に座らせ、一緒に窓の向こうを見つめる。
「…スジュナはいつになったら、『どれい』じゃなくなるのかなぁ…」
…『奴隷』でなくなるとき、か。
スジュナは私を見上げて、「おねえちゃんはいつだと思う?」と言った。
「大人になったとき?おばあちゃんになったとき?」
「…んー…そうだね…もしかしたら、もう奴隷じゃないかもしれないね」
そう言うと、スジュナは首をかしげた。
私は、小さく笑う。
「だってもう、スジュナちゃんはラサバさんの『娘』でしょう?」
ラサバとスジュナの関係はもう、奴隷と主人のそれではない。
ラサバはスジュナの『父』であり、スジュナはラサバの『娘』。
仮にそれが、奴隷屋を通じてできたものでも、だ。