月夜の翡翠と貴方【番外集】
「スジュナね、今とっても幸せなの。パパがいて、おねえちゃんとおにいちゃんがやさしくしてくれて、家族もできて…なりたいものだって、みつかった」
奴隷屋で、ラサバに買われたスジュナ。
めまぐるしい環境の変化に、戸惑ったことだって何度もあるはずだ。
けれど確かに、感じたのだ。
ラサバの、愛を。
人間の、暖かさを。
「…スジュナちゃん、もう一度、頑張ろう。私達は、普通のひとよりいろんなことが難しいから。だからね、そのぶん頑張らなきゃ」
スジュナは、しっかりと頷く。
…私も、頑張るから。
ルトと歩むと決めた、この人生を。
彼を信じて、どんなに苦しいことがあっても。
ジェイドはスジュナと目を合わせ、優しく笑った。
「…それでね、褒めてあげて。頑張ってきた、スジュナちゃんを。『奴隷』だったころの、スジュナちゃんも。愛して、あげて」
奴隷だったころの、自分を認めてあげる。
難しいことだ。
私だって、できるかわからない。
やっぱり汚くて、穢れていると思う、『奴隷の私』。