月夜の翡翠と貴方【番外集】


けれど、彼が綺麗だと言ってくれたから。


そのとき、認めてあげられるかもしれないと、思ったのだ。

頑張ろうと、思ったのだ。


スジュナは瞳に涙を溜めて、けれど零れるのを耐えながら頷いた。


「…がんばる…!時間かかっても、がんばる!ぜったい、ぜったい、あきらめない!」


…強い子。立派だ。

きっと、将来素敵な役者になるに違いない。


「…一緒に、頑張ろうね」


ぎゅ、と強く抱きしめる。

同じ、奴隷だった過去を持つ少女。

私はこの子に、どれだけのものをもらっただろう。

私にないものを、たくさん持っていた。

そのとき、スジュナがふ、と笑った。


「…おねえちゃんに抱きしめられるとね、すごく安心するの。…お母さんって、こんなかんじなのかな」

私は、目を見開く。

…母のような、温もり。

目を閉じて、思い出すのはこんな私を愛し続けた、母のこと。


ジェイドは優しく笑うと、「ありがとう」と言った。



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