月夜の翡翠と貴方【番外集】


その頬にはわずかに赤みがあって、ルトと顔を見合わせた。

「…え、どこに…」

「いいから、ついてきて!」

ルトの言葉を遮って、はずかしそうに彼女は言う。

…いきなり、どうしたというのか。

ルトが呆れたように「はいはい…」と言うと、ロゼはつんとしてこちらに背中を向け、歩き始めた。


「…どうしたの?ロゼちゃん」

「知らん…」

昨日話したことで、ロゼとルトがだいぶ仲良くなったことは、わかったけれど。

ふたりでその背中について行くと、たどり着いたのは気難しい顔をして椅子に腰掛ける、団長の前だった。


「…どうした、ロゼ」

男が、ロゼに気づいて声をかける。

彼女はなかなか言い出せないのか、少しの間葛藤するような顔をしていた。

やがて覚悟を決めたように、男を見つめる。

そして、驚くことを言った。


「…もう一度、昨日の試験をさせて下さい」


私とルト、そして男が目を見開いた。

…クランによると、昨日の試験でほぼスジュナの合格は決まっているらしい。

できなかった最後の項目は、ほとんどロゼと向き合わせるためのもので、演技の試験としては合格だと。



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