月夜の翡翠と貴方【番外集】


「ちょっと!ねえ……」


気づかれないとわかったのか、ロゼは唇を噛んで、迷うように下を見た。

口を開いて、そして、また閉じて。

ジェイドとルト、そして父が見守るなか、ロゼはいらついたように「っもう!」と声をあげた。

…そして。


「…っ…ス、スジュナ!!」


…はじめて、名前を呼んだのだ。


スジュナはびくっと肩を揺らし、慌ててこちらへ振り返る。

自分を呼んだ人物に気づき、大きく目を見開いた。

周りの劇団員達も、驚いた様子でふたりを見ている。


ロゼは真っ赤な顔で、大きく口を開いた。


「…きょっ、今日の昼!もう一度、試験をするわよ!いいわね!?」


…相変わらずの、上から目線だが。

スジュナはその言葉に、目を丸くした。


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