月夜の翡翠と貴方【番外集】


そして、その意味に気づいたのか、ぱあっと笑った。


「…うん!!」


スジュナの笑顔に、ロゼはハッとしたような顔をした。

そして、まだ赤い顔を俯かせ、目をきつくつぶる。


ルトが、頭をぽんと、撫でた。


「…よく頑張ったな」

ロゼは、小さく鼻をすする。

思わず団長を見ると、満足気に微笑んでいた。


稽古場に、笑顔が広がる。


優しくて暖かい気持ちが、私のなかにも広がった。







そして、昼。


昨日と同じ時間に、ロゼとスジュナは稽古場の中央に立っていた。

劇団員達が、静かに見守っている。


「…では、準備が整い次第、はじめなさい」


団長の言葉に、ロゼがスジュナを見つめる。

スジュナが、こくんと頷いた。


…ふたりの、お互いを見つめる目が、昨日とは明らかに違う。

決意に満ちた、目だった。


ふたりは昨日通り、第一項目から演技をこなしていく。

けれど雰囲気が、違った。

ロゼは安心したような顔をしていて、スジュナは楽しそうで。



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