月夜の翡翠と貴方【番外集】


長いスカートが揺れ、その足は親友のもとへ。


会えて、嬉しい。

ああ、愛しい親友、レミール。

ピスパニラは、駆け出した。

そして、レミールへ手を伸ばす。


…そして、抱きしめた。


「………っ」

ぎゅう、と、確かな強さで。

ロゼは、スジュナをしっかりと、抱きしめたのだ。


見守っていた皆が、安堵の息をつく。


スジュナはロゼの身体を、強く抱きしめ返した。

そして最後に、レミールは笑うのだ。

嬉しい、と。

心からの、笑顔で。

昨日できなかった、太陽のようなその演技を。

…する、はずだったのだけれど。



「……うわぁあん…」


…スジュナはその瞳から、涙をこぼした。


皆が、目を見開く。

あんなにまで頑なに、涙を零そうとしなかったスジュナが。

声を上げて、しっかりとロゼを抱きしめ、泣いていた。



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