月夜の翡翠と貴方【番外集】
そしてその夜、ジェイドとルトは一家の食事に招かれた。
「ありがとうございます…!何度も、何度も…!」
未だに涙の余韻が消えないラサバが、頭を下げてくる。
さすが大家族、食事の席が多い。
十数人が一部屋で食事を取るというのは、貴族時代でもあまり経験がないことで、新鮮だった。
皆、スジュナとロゼが打ち解けたことが嬉しいのか、表情が柔らかい。
ルトはスプーンを片手に、ラサバを見て楽しそうに笑った。
「いいんだよ。俺らも、稽古見せてもらったし」
な、と言われ、ジェイドは微笑んで頷いた。
クランが、明るく笑って「そうよー!」と言った。
その手には、酒の入ったカップが握られている。
「ふたりのおかげなのよ!ね、ロゼ!あなた、ルトさんに話を聞いてもらったんでしょう。お礼は言ったの?」
言われたロゼは、びくっと肩を揺らした。
ルトを見て、はずかしそうに眉を寄せる。
そして、目を逸らしながら。
「….あ、ありがとう…ございます」
…可愛らしい、ひとだ。
様子を見ていた団員達が、ロゼを見て暖かく笑った。